2018年3月29日(木)

美味しいワインを探すには、大袈裟に言えばワインの歴史にも注意するといい。

 

古いものは思い出の味で美味しいと思われているが、それは間違いなく科学的な裏付

 

けがある。というのは1980年初めころまでは濾過用のフィルターがなく、時間を

 

かけて静清させ瓶詰めをしていた。小規模のブルゴーニュ等ではまさに手詰めで、

 

有名なロマネコンティも味の均一化を図るため何樽か混ぜて濾過なく瓶詰していた。

 

今回開けたワイン達も濾過によって旨味や香りが滓と一緒に取り除かれたものと

 

そうでないものの違いが若い順から飲み進めて行くと、70年代から急に胸に迫って

 

くる香り、深い味わいと余韻の長さに、味の景色が変わったと気づかされる。

 

それは今よりも天候に左右され、「ガチ」で収穫量を落として造っていたのと

 

大気温が低く夜間と日中の寒暖の差が15度以上あるという理想的な環境だった

 

現れだからだ。

軽めだがバランスよくできた’88マジシャンベルタン。

トロワグロ等星付きレストランの為に詰められた’85、この鼻を擽る魅力的な香り

 

は他には見当たらず、シャンベルタンと同格を感じさせる。

’78は正にレーズンフレーバー全開で、70年代最高の当たり年と言っても

 

過言ではない味の風格を見せた。

 

’72は外れ年とされていて、

 

価格も安めで探せばまだ見つかるのでお勧めだ。ただ開くのに時間がかかり、

 

前日抜栓は必要。

 

前回のミュジニでも圧倒された名手「クレールダユ」、

 

そのカズテイエ。プルミエクリュながら堂々たる体格で’85よりも

 

スケールが大きく、説得力のある味わい。「これだけでもいい」という人続出。

 

 

パトリアルシュの最後の末裔の名前(ノエミヴェルノ)をつけた1964年の

 

シャンベルタンは圧巻で、「膝まづいて脱帽して飲むべし」は

 

モンラシェだけだけでないことに一同異論はなかったはずだ。

 

オードブルはあわびスモーク、チューリンガーソーセージ、本マグロハム

寿司はインドマグロづけ、平目昆布〆、こぼれ帆立

メインのカナールロティオフランボワーズ、ポテトピュレ、ごぼうロティ

1958年アルマニャックをたっぷりしみ込ませたデセールはオペラ。

 

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2018年2月1日(木)

1月27日のワイン会はシャンボルミュジニの魅力に迫ったはずだった。

 

事の発端はメンバーのAさんが何度説明してもシャンボルミュジニと覚えてくれず、

 

頑なに「ミュジニ」を連呼するので、本当に前に何もつかない、

 

それも名手クレールダユの本物を登場させることになった。

 

ただこのワインだけでも¥250000、ドキドキである。

 

つまみの準備も完了し、いつものシャンパーニュでスタート。

 

これは我が家のスタンダードで輸出用ではないものを蔵から直接買い付けたので、

 

鮮度は抜群だ。その鮮度がどのくらいの物かカーミットリンチ風に言えば、

 

 

「水の中で水中めがねを差し出され、急に視界が開けくっきり見えるようになった」

 

 

感じ。

 

まるで8kテレビを初めて見た時のようで、初めての人は味の際立ちに驚く。

 

 

業界関係者でもこの味を知るものは少ないかもしれない。

 

 

次はラフェ一族のワインだが蔵の情報がないので味わいだけで色々探る、

 

 

これがまた楽しい。

 

続く’85マグナムは先月忘年会で開けたので参加メンバーは知っている味のはずだ

 

 

 

が、今回の全部デカンタージュをした円やかさと最後まで続いた甘みには

 

 

驚いたと思う。

そしていよいよこれを「とり」にしても文句が出ないレベルの

 

レザムルーズ’83の登場。今が絶頂のピークで火の打ちどころなし、

 

といった状態。まるで孔雀が優雅に羽を広げた見事さ、

 

所謂ピーコックテールを見せられたようで、円やかさ、透き通った香り

 

そして何処までも続く甘み、なかなかブルゴーニュワインを飲んで

 

ここまで美味しいのは御目にかかれないのではないか?そんな出来栄え。

 

そのあとの’66、そしてとりのミュジニと続いたのだが、

 

あまりの出来栄えに皆でAさんに感謝したはずだ(たぶん、心の中で)。

 

やはり何もついていないミュジニは最強だった。飲み進んで6本目、ということは

 

他のワインの育ち方を一同確認しながらここまで来たわけである。

 

当然年代の熟成具合を体験してきたはずなのに、矛盾した味と出会う。

 

42歳になっているのに若さの象徴の「渋み」がたっぷりとある。

 

それにものすごく力強い。ブルゴーニュワインの中で一番軽やかで

 

チャーミングなはずがちょっと違う。そのためスプーンで一口くらいの量

 

 

をグラスに注いでも入りきれないスケール感。

 

 

前回のリシュブールの素晴らしさを経験して、怖いもの知らずになっていたはずの

 

 

メンバー一同が驚愕する。逆にこれが1本¥250000だと安く感じる味だ。

 

 

 

しかし私の一番のお気に入りは’83レザムルーズでもこの最強の1本でもなく

 

 

50歳を過ぎているのに軽やかでチャーミングで優しく微笑んでくれた、

 

 

’66のシャンボルミュジニだった。

 

 

これは無名で(私が知らないだけ)ラベルも良く見ずに開けたのだが、

 

 

香りが一番魅力的で「はぁ~」と声が出てしまった。

 

 

皆それぞれに宝物を見つけた「飲む歴史遺産の旅」、収穫が多かったようだ。

 

トマトをマリネしたドレッシングで合えたサラダ、天然紅鮭マリネ、

ほっき貝のワイン蒸し、ほたてスモークバジルソース、フォアグラムース

鶏のオレンジソース

本マグロヅケ、ボタンエビ、クエ(九絵)の寿司

デセール ジャマン特製 ノワゼットのプラリネが入ったガトー

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2017年12月17日(日)

11月25日は今年を締めくくるのに相応しいワイン会になった。

 

リシュブールを開けるのはこれで4回目になったが、敢えてDRC以外で

 

心を時めかせてくれるものを選んでいるつもりだ。

 

その中で毎回登場するのがシャルルヴィエノ。

 

ネゴシアンとして今も活躍しているらしいが、

 

こちらが評価しているのは80年代の悪法の影響をあまり受けなかった

 

であろう作品達だ。今回は’82と’83の飲み比べの予定だったが

 

ヴィンテージラベルがなく、コルクを抜いたところ双方同じ年であることが

 

判明し急遽’85に差し替える。これが珍しくできの良いポートワインのように

 

熟成しており、この偶然がデセールのフランボワーズとショコラのケーキに

 

良いマリアージュとなった。

 

いつもは大抵シャンパーニュから始めるが、つまみが白に合いそうなので

 

普段飲めないモエ・エ・シャンドンの泡のない「サラン」で幕開け。

 

次も中々見つからないポンソがアリゴテで造るモレサンドニ。

 

「黙って出されたら分からない」と一同驚くナッティーな後味と

 

長い余韻がムルソーを思わせる。

 

シャンパーニュヴィネガーとグレープシーズオイルのドレッシングを纏った

 

酸味の効いたサラダとこれらの味わいが心地いい。毎回登場しつつも

 

注目されなかった、サヴールクリュブも素晴らしい表情で、やっと皆に

 

評価され、最後まで崩れることなく主役に寄り添っていた。その主役

 

’64のマグナムは、これこそリシュブールと言わしめる非の打ち所の

 

無い完成度と若さで、あと30年いや50年は持つと皆納得。

 

あのルロワがここから買い取り、自分のラベルで販売していたのは

 

とても有名な話。「DRCよりも私のリシュブールが旨い」と

 

蔵に来たアメリカ人に宣伝していたため、現在もルロワの方が

 

DRCよりアメリカでは高いようだ。

 

ボルドー好きのAさんは首を傾げつつ参加頂いたが、

 

「これでブルゴーニュに開眼した」との評価は最高の美味さ

 

だったと理解している。

オードブルは、サラダ、アワビハム、ツナリエット、フォアグラパイ包み、

 

イカの塩辛バルサミコ風味、

メインはフランス鴨のフランボワーズソースとポテトピュレ。

 

お寿司は、酒蒸しタコ、平目縁側昆布締め、本マグロ漬。

 

デザートはジャマンのレトロフランボワーズ。

 

 

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