2019年3月31日(日)

昨日は生憎の天気でワインの温度管理が

難しかった。

昼の時点では至って良好だった

100歳と57歳は本番で香りがしぼんでしまった。

一方、3種のポマールは絶好調で

特に’83はただの村名にも関わらず

腕利きのネゴシアンものなので

メインと2番手がお休みしている間を

豊な表情でつないでくれた。

テイスティング時に今一つで心配だった

’76は本番ではゆっくり開花し、

最後まで穏やかな表情を崩さなかった。

この作り手は評判が芳しくないが、

状態の良いもの(ヴインテージ含め)を

選べば十分に楽しむことができる。

一般にオスピスドボーヌのもので外れは少ない。

ワインも開けてみるまでは中身が分からないので

保険の為に選んだ’48は1級畑の物ということもあり、

昨夜の抜栓時、昼のテイスティング時、何れも良好で

最後まで力強い潜在能力を感じさせてくれた。

後でこっそり「これ買いたいのですがありますか?」と

聞かれたほどだった。

100歳と57歳を事務所の一番温かい’神棚’に上げ

開花を祈願したお蔭で味と香りが回復し、一同大喜び。

これがダメだったらこちらは’切腹か’と思ったが

首がつながり最後の滓まで楽しんで頂けたようだ。

3種縁側、左から平目、ナメタガレイ、松皮カレイ



左2個はインドマグロヅケ、本マグロトロ

左からホッキ貝(1個を2つに切った)、アイナメ、平目昆布〆

はまぐり椀(身は2個分)

新しいスペシャリテの穴子いちご煮

このスペシャリテは「牡蠣のいちご煮」と共に製作中で

「自分だけ飲むんじゃないよ」というお上の声で

穴子にもワインを一晩飲ませ(マリネ)

じっくり煮込んでから焼いて、いちごソースをかけたもの。

このソースが一番人気で前回同様’皿舐め’続出。




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2019年2月4日(月)

評論家たちが「これが美味い!」と口々に

言っているので昨夜のワイン会で試してみることにした。

一番若くて’83なので初めての人は驚いただろう。

円やかでバランス良すぎの’82のパヴィヨンルージュ。

ふつうならこれがトリだと思われる風格の’78.

そして最初の衝撃の’63.

まったり甘くベルガモットの世界に一同小さい歓声を上げる。

「なんでこんな香りになるの?」と。

それでも飲み進んでいくと’61が一番若々しく

飛び切り美味いことに驚愕する。

これを造った当主がここを引き継いで40年で、

一番出来が良かったと。

更にフルボトルしか製造していないにもかかわらず

この年だけマグナムを詰めたらしい記事を’教科書’で発見。

飲み初めから良い香りがするが

最後の滓の中になるほどバラに近い’ゼラニウム’の香りがした。


今まで体験したことのないこの香りは正確には

’ペラルゴニウム’のらしい。

つまみは

サラダ(シャンパーニュヴィネガーとグレープシーズオイル)

ツナリエット、シーフードハムのホタテとカキ、食用ほおずき

お寿司は 

ワタリガニの卵塩辛、ぼたんえびとエビッコ塩辛、インドマグロヅケ

アントレはアニヨーグリエ カシスソース、それに

銀鱈ロースト苺ソース

メインの写真を撮り忘れてアニヨーは骨だけになってしまった。

一番右端の’96バルベラダルバはアニョーと銀鱈のソース用に開けた。

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2018年12月3日(月)

「ワインは酸化すると美味くなる」ということは誰でも知っているが、

 

 

どうすればいいか教えてくれる人がいない。

 

 

教科書にはパニエに寝かせ、デカンタージュすれば

 

 

酸化が促進されヴィンテージワインも美味しくなる、と。

 

 

でも30年以上寝ていたものは、すぐには開かず、

 

 

この通りデカンタージュしても、味が荒れてしまう。

 

 

ワインも寝起きが悪いわけだ。

 

 

それで長年考えていた答えの一つがワインシャワーだった。

 

でも天国へもう少しというところだというのは分かるが、

 

 

それ以上は登れなかった。

 

 

しかしこれに出会い、

 

 

天国への扉が昨晩開いた。

なんのことはない酸素缶だ。

 

 

ワインを保存するのに窒素ガス缶を使うのに、

 

 

その逆をすることに長年頭が回らなかったわけだ。

 

 

このことを実証する場、それが昨夜のワイン会だった。

 

 

一同「そんなことあるの?」と信じなかったが、

 

 

論より証拠で、試したところ何れも素晴らしく開花し、

 

 

天国の扉が開いたと思う。

人数が減ったのでマグナムはやめて、’85リオナから始める。

 

 

ラベルを見ると一瞬ラフィットの造るラカルドンヌを思わせる。

 

 

しかし味わいはもっと上で、そこは一面赤い花畑の中にいる香り、

 

 

そして何処までも甘い味わいが続く。「信じられない」と

 

 

皆思ったに違いない。聞いたこともないそれも外側の

 

 

ACサンテミリオン。とてもしなやかでオードブルに

 

 

よく合う。次もラベルが信じられない’75ドプレサック。

 

 

これと’59ドプレサックは蔵出しで真っ新だ。

 

 

’47カイウと一緒に仕入れたので同じコンディションと思ったが

 

 

コルクを抜いて驚いた。なんとりコルクボトルなのだ。

 

 

コルクの上に’96と’97リコルクした、との印字が。

 

 

ということは、味に特徴が出る。熟成し直して22,3年。

 

 

リコルク時に足した目減り分の新しいワインが

 

 

そろそろ大人になりだして自己主張を始め、

 

 

60年前のワインと瓶の中で馴染まず、

 

 

不協和音を出し始めていたが、

 

 

それが不思議と心地よいのだ。

 

 

ストラビンスキーの春の祭典ではないのだが

 

 

あれほどスリリングではないにしても

 

 

とても不思議な世界が広がる。

 

 

そして’67ヴューシャトーセルタン。

 

 

ここから景色ががらっと変わり、赤い花でも

 

 

ブーゲンビリアからバラとイチゴのシロップになる。

 

 

息もつかせぬ勢いで’64ヴィルモリーヌの甘い温風が

 

 

流れてくる。実はこれが2番目のお気に入り。

 

 

以前飲んだ時も甘く優しく包まれ、

 

 

忘れられない味わいだったのだが今回も

 

 

裏切られない素晴らしさ。でもこれは’70までで、

 

 

オーナーが変わってからは評判を聞かない。

 

 

 

’59はもう還暦なのに年相応にふるまうのを

 

 

ブレンドされた新しいワインが引き留める。

 

 

まだいける、まだいけると。

 

 

そして’53、これが飲みたくて企画したようなもの。

 

 

とにかく素晴らしいの一言。メルローが熟成すると

 

 

ピノノワールに似てくると、言われている通りになっている。

 

 

そろそろとりの’47を開けなくては。

 

 

これに合わせるのはブルーチーズとピーナッツかりんとう。

 

 

ブルーチーズは苦手な人もいるので、十分にバターと

 

 

パナッシェして、スコッチウィスキー入りはちみつをかけた。

オードブルはアワビハム、ツナリエット、タラバガニ、トリュフカマンベール

 

寿司は本マグロヅケ、うに塩辛炙り、〆金華さば炙り

 

カナールロテイ フランボワーズソース、ポテトピュレ

 

左からステイルトン、ゴルゴンゾーラ、ダナブルー、ピーナッツかりんとう

 

 

これらチーズで天国の扉が開いた人もいれば、’64ヴィルモリーヌの

 

 

甘い熱風に煽られて開いた扉の向こうが見えた人もいたはず。

 

 

もちろん私もその一人だったのだが。

 

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