2015年8月7日(金)

甘みは旨みとよく言われますが、

 

1970年代くらいまではこれらのワインは

 

とても人気がありました。社会が豊かになると、

 

食事の傾向が変わり、酒類は

 

辛口になると言われています。が、

 

これらのワインをただで飲んでもらっても

 

「不味い!」という人はいません。

 

ただ何となく、赤ワインのフルボディに手が伸びる

 

だけなのでしょう。

 

写真左端から、1939年シャトークテ、

 

1955年シャトーディケム

 

1961年シャトートリュエ、

 

1967年クロ シャポンセギュール、

 

1988年Rドリューセック、

 

1994年シャトーラボリ。

 

貴腐ワインの原料のぶどうは、

 

樹になっている時から貴腐菌の作用でぶどうの中で化学変化

 

が起きて、普通のぶどうとは違った育ち方をするため、

 

美味しさのピークが来るのが遅いだけでなく

 

増加したミネラル分の作用で酸化、

 

劣化ともに遅くなるようで、

 

普通のワインと比べると日持ちするワインです。

 

お勧め料理は和食で、料理に砂糖、

 

みりんを使うため、他国の料理と比べると、

 

デザートと料理の区別が曖昧で、

 

食中酒として合わせても違和感がでません。

 

きっと料理とワインの両方の良さを感じる程よい

 

距離感がでるからだと思います。

 

右端のシャトーラボリはこの中ではまだ若者で、

 

甘みが前面に出て、

 

ぶどう由来の香りに支配されている味わい、

 

でもこのクラスではこなれた熟成感で楽しませてくれます。

 

おうちで食べるカレーライス、

 

肉じゃが、甘い卵焼きにとても良く合います。

 

次のRドリューセックは甘い香りで辛口ワイン。

 

飲み始め、口に入れた時は甘口で、

 

飲みこむ頃は辛口の不思議な味の個性です。

 

これは貴腐菌が上手く着かなかったぶどうで

 

造られた辛口ワインなんです。

 

だから途中まで甘く、後で辛くなるんです。

 

先月から続く猛暑の時にスッキリ暑気払いするのに

 

最高のワインです。

 

1967年のこのワインから味わいが別世界になります。

 

この頃から本領発揮で、

 

「ヴァンモワルー(デザートワイン)とはこうゆうものですよ」

 

と言える代表的な味です。

 

とにかく出しゃばる味がなく、甘すぎず、渋みもなく、

 

ただ穏やかに心地よい世界へ

 

誘ってくれます。

 

これと対照的なのが1961のワインで、

 

シェリーのフィノのようにすっきりと辛口で、

 

甘みを全部使い切って発酵させた貴腐ワインという味です。

 

ブラインドで飲んだらヴィンテージシェリーと間違うでしょう。

 

そんな中で魂をつかんで離さないのは、

 

とても素晴らしい仕上がりの左端のシャトークテ。

 

このようなワインを飲んだことのない

 

このワインと同じ年代のうちのフェローがとても感動し、

 

ビニール袋に入れてもって帰りたい

 

(女房に一口飲ませたい)と言い出したほどの旨さ。

 

とにかく円やかで、甘すぎず、穏やかで、

 

あらゆる料理と寄り添い幸せになれる仕上がり。

 

これに比べれば、シャトーディケムはまだまだ若く感じますが、

 

当たり年でぶどうの選別も

 

抜群なのは、一口飲んだだけで分かるほどの格の違いを感じさせます。

 

甘みも酸味も前に出てきませんが、

 

きっと陰に潜んでいるのだろうと、飛びっきり酸っぱくて

 

こってり甘いレモンのタルトをオーダーし、

 

合わせてみると驚くほどの酸味を感じ、更に

 

タルトよりも甘い味わいに支配されました。参りました。

 

 

今の時期なら、このようなパッションフルーツのタルトがもっとお勧め。

 

美味しく飲むポイントは、

 

1)できれば1970年代以前の物を探す。

 

2)前の日にコルクを抜いて、すぐにリコルク。

 

3)甘み、酸味のある料理と合わせる。

 

4)鉄板は、シュークリーム。

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2015年7月20日(月)

簡単に言って「古いワインは味が濃くて美味しい」に尽きます。

 

なぜかと言えば、

 

写真のモエシャンドンの70年代の物は、

 

生産量が今の半分以下で、

 

寝かせたから美味しいだけでなく、

 

元々の味わいの豊かさが違います。

 

堀賢一著ワインの個性(p116から抜粋)によれば、

 

シャンパーニュの生産量は

 

1940年代1ヘクタールあたり24ヘクトリットル、

 

1980年代1ヘクタール66ヘクトリットル、

 

2005年は95.625ヘクトリットルです。

 

同じ予算で、若くて

 

有名な物も良いのですが、点数に惑わされているうちに、

 

写真のような飲む歴史遺産が

 

消えつつあります。

 

 

2003年のドンペリロゼに¥26000払うなら、

 

知名度は低いのですがこの写真のような、

 

ポールボキューズ料理コンクールスポンサーの

 

アランティエノ、日本にも少量入荷している、

 

アンリグトルブなどはもっと

 

コストパフォーマンスが高く、美味しさに驚くでしょう。

 

更にもう少し予算を足せば、言わずと知れたモエシャンドン、

 

そしてロシアをシャンパーニュで水浸しにしてしまうと

 

言われたヴーヴクリコなどなど。

 

バックヴィンテージを探せばまだ見つけられるので、

 

急いだ方がいいですね。

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2015年7月3日(金)

ワインは刺身と同じ、なまもので、

 

鮮度と扱い方(切り方)で味が変わります。

 

ワインが刺身と同じといわれても

 

ピンと来ないかもしれませんが、

 

どちらも火を加えずに、そのまま食べるので

 

同じと考えていいと思います。

 

でもワインの鮮度、切り方といっても、

 

瓶の外側からではその良し悪しは分かりませんし、

 

刺身のように色々な種類の包丁を使うわけにいかず、

 

特にワイン初心者は

 

とても困るところですね。

 

ではどう判断するのか?

 

まず刺身で考えれば、

 

一般的に鮮度が良いと身が硬直して固く、

 

白身で一番美味しいとされている「ふぐ」は、

 

平目のように薄く切っても固くて噛めず、

 

食べることができません。

 

だからお皿の模様が透けて見えるくらいに薄く切ります。

 

つまり素材の特徴に合わせて、

 

 

より美味しさを感じやすい形にして提供します。

 

ワインの場合は包丁で切るわけにもいかないので

 

何で切ればいいのか?

 

それは「グラス」で切ります。

 

若くてまだ味の輪郭の分かりにくいものや、

 

逆に熟成が30年以上の

 

味わいが柔軟になったものでは選ぶグラスの形が違います。

 

何の根拠もなく選んだ

 

テイステインググラスでは美味しく飲めません。

 

ではどうやって選ぶのか?

 

最初のポイントは、

 

原料のぶどうが1種類か複数種類かで、決めます。

 

一般的に1種類(単一品種)の時は丸いブルゴーニュタイプ、

 

複数の場合は、ボルドータイプを選ぶようにします。

 

これは目安なので、絶対ではありませんが、

 

グラスの選択が適切でないと、

 

ぶどう本来の香りを感じるのが難しく、

 

たとえばカベルネフラン100%のワインを

 

ボルドータイプに注ぐと、

 

感じられるはずの桃のような柔らかいニュアンスを感じられず、

 

梅酒のような香りになってしまう事があります。

 

これではいくら頑張っても、美味しさは半減してしまいます。

 

選ぶ2番目のポイントは、

 

ワインの体質に合わせたグラスの厚みです。

 

味わいが薄く「シャバシャバ」したものなら厚いグラス、

 

逆に、味が濃く樽の香りの強い物は「ふぐ」と同じで、

 

できるだけ薄くなめらかな材質(カリクリスタル)のグラスで。

 

3番目のポイントはグラスの大きさです。

 

味が薄く「シャバシャバ」したものなら、

 

厚く小ぶりのグラス。

 

逆に、濃い味で樽の香りの強い物は、

 

薄く大き目のグラス。

 

4番目のポイントは注ぐ量です。

 

味わいが薄く「シャバシャバ」したものなら、

 

厚く小ぶりのグラスに

 

全体の3分の1くらい。

 

濃い味で樽の香りの強い物は、

 

薄く大き目のグラスに全体の1割以下、

 

できればスプーン2杯分(20cc)くらい

 

注いで味わってみます。

 

濃くて分かり難いものがほぐれて行き、

 

味の輪郭、景色が見えてきます。

 

いずれも目の前の雲がはれて、

 

絶景が見え始めてくるようです。

 

このように基本のポイントを踏まえて、

 

試行錯誤を繰り返していくうちに、

 

今まで感じたことのない

 

「うっとりするピノノワールの薔薇のような香り」や、

 

身体に吸い込まれていくような酔い心地と共に、

 

美味しさを味わうことができるでしょう。

 

*ワインの鮮度は、輸送、保管温度等を

 

(分かる範囲で)調べ、

 

最終的にはコルクを抜いて、

 

立ち上がる香の強さで判断できますが経験が必要です。

 

鮮度が悪く、力のないワインは劣化が早いので、

 

グラスに注ぐ量は上記の半分くらいで、

 

様子を見ながら調節すること。

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