2016年2月7日(日)

 

先日お会いしたマダムが、「ワインを飲むと頭が痛くなる。

 

そしてお店で飲むと頭が

 

痛くならないけどグッときて酔い心地が悪い。」と。

 

この話題で立話なんと40分。

 

わたしも真面目(くどいだけだが)だがこのマダムもまじめすぎ。

 

話がもっと続きそうなので、

 

理論ではなく証拠を見せることになったのだが午前11時。

 

真昼間だし初対面なので、

 

一番肝心のグラスの重要性を水で検証することに。

 

水の味の変わるグラスと大量生産の何を飲んでも変わらないグラスで

 

「純水」の飲み比べ。

 

余りの違いに驚き感心され、

 

「何か1本」という事で店主のハウスワインをお買い上げ。

 

2日後、やはり朝一番でご来店され、

 

「旨かった!1本一気に飲む勢いで飲めて、

 

頭が痛くならなかったし、酔い心地も悪くなかった」と

 

ご評価頂きほっと一安心。

 

偶然にも翌日、同じような疑問をもつ別のマダムが来店され20分立話。

 

お二人ともが口をそろえて言うには、

 

「自分たちに合うワインを選ぶ情報がない」、と。

 

どこに行って誰に聞けば飲みやすく、

 

酔い心地の良いワインに出会えるのか?

 

その答えはここにあると言えばいやらしくなってしまうが、

 

少し説明してみよう。

 

第二次大戦後、徐々に経済活動が盛んになり

 

ワインの生産量も増加してきたが、

 

オイルショック、ワインゲート事件などによりワインの価格が暴落した。

 

 

それに追い打ちをかけるように政権交代した社会党の

 

ミッテラン政権による

 

主要企業の国営化と相続課税の増加により

 

ぶどう畑を手放す生産者が増え、

 

次の相続の為に色々テクニックを駆使する者が増えた。

 

各地の生産者がFAXで直販を始め、現在も続いているが、

 

ごまかしの過ぎるネゴシアンが駆逐されてきた。

 

(最近はピエールブレ)

更に技術革新という名のもとに1995年ごろから

 

幅を利かすようになった、

 

ぶどう果汁の水分を凝縮或いは除去技術、

 

樽熟成もどき(オークチップで香り付)等、

 

生産者にとって、ぶどうの出来が悪くとも何とか美味しく(?)

 

造れてしまう今話題の「麻薬」のような物。

 

そして悪酔いの原因と考えられる農薬、亜硫酸、補糖。

 

一番知られていないが、

 

この補糖しすぎがグッとくる酔い心地の悪さの原因かもしれない。

 

ぶどう果汁を水増しし、補糖、

 

そして樽熟成させると美味しい雰囲気になる。

 

それを温度管理せず、

 

流通させたものを飲むとグッときて酔い心地が悪くなる。

 

一言で言えば簡単だが、これが現実かもしれない。

 

志の高い、国内の生産者のワインも

 

試飲会で試すと良いのだが、

 

店で一般消費者と同じに棚から購入すると悪酔いする。

 

この、流通段階で温度管理しないのも悪酔いに拍車をかける。

 

なぜか、だれも大声で言わないが

 

「ワインは瓶に入ったお刺身なんだ」と。

 

以上の事から分かるように、

 

無農薬(減農薬)、最低限の亜硫酸使用、

 

少ない補糖、流通時の温度管理、

 

これらの条件を満たしたものが

 

酔い心地のよい「飲み疲れしないワイン」と言える。

 

写真のワインは生産者がバラバラだが、

 

ぶどうの出来が良かった1959年の空輸物、

 

もちろんでセラーで温度管理しているので、飲み疲れしない、はず。

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2016年1月22日(金)

1本¥1000位のワインでも、

 

アメリカの偉い人が90点を付けることがある。

 

あの「飲む宝石」ロマネコンテイと同じ高得点だ。

 

でも両者は全く別物で同じ90点が付いただけ。

 

ただ困ったことにネットなどで売り出すときは、

 

「あのロマネコンテイと同じ90点ワイン」と大々的に宣伝する。

 

確かに¥1000としては美味しいが、

 

1本¥1000000以上のロマネコンテイには

 

1000回以上飲んでも味は追いつかない。

 

ワインの世界だけでなく他にも

 

分かりにくいものが多く、お寿司のサーモン(鮭でなく養殖ニジマス)、

 

縁側(普通は平目だがアブラカレイ)等。

 

安くて良いものがないはずなのに、

 

安くて良いものがある、「それはこれだ!」と

 

言わんばかりの紛い物が大手を振って歩いている。

 

だから皆もそんなものかと思ってしまう。でも

 

よく考えれば分かることで、¥1000円のワインが

 

ロマネコンテイと同じはずはないし、

 

天然の鮭がサーモンと同じくらい脂が乗っていたら、

 

また天然平目の縁側を握ったら1個¥2000以上になってしまう。

 

どちらが先かは分からないが、

 

「安くないと売れない」または「市場を独占しよう」

 

という販売者の思い込みや、

 

「一円でも安く買いたい」というありえない値段を

 

追い求める消費者も

 

そろそろ考えを改める時だと思う、事故に遭う前に。

 

写真の物は偽物ではなく、ルロワが引き継ぐ前のネゴシアン

 

テデュレールのロマネコンティ。

 

一番下手な瓶詰業者と言わたが、とても美味しかった。

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2015年12月26日(土)

「日本からわざわざ来たんだから、蔵を訪問させて?」といったら、

 

「今忙しい」と。

 

それでもと頼み込んで訪問すると、

 

忙しいはずが皆でお茶を飲んでのんびりしている。

 

こんなところがフランスなのかと思いつつ挨拶をすると、

 

「別に日本に売らなくともヨーロッパに顧客が1000軒あるからいい。」

 

と言われ、

 

そんな事言わないでとゴーミヨの記事

 

(’96年間優秀栽培者受賞記事)を見せながら

 

食い下がり、やっと試飲させてもらっているところへ

 

創業者が出現。開口一番

 

「日本人の女性は始めて見た。可愛いからキスさせろ」と。

 

80歳はとうに過ぎて見える親父の言葉に

 

女将も私も一瞬固まってしまった。

 

その隙に女将を抱き寄せ頬にキス。

 

「ふざけるな、日本では絶対にありえないゾ!」

 

という言葉を飲みこんで我慢していると、

 

この色男は家の親父と同い年の73歳だという。

 

こんないい加減で不謹慎、

 

でもこんな洒落たことは家の親父には絶対言えない。

 

ワインの味よりもこの親父の歓迎にすっかり参ってしまった。

 

気合が入り、全てのラインンナップを仕入れた中の、

 

お気に入りはあと2本。

 

この看板ワインの中身が普通のブリュットではなく、

 

プルミエクリュとグランクリュのブレンドだという事、

 

そして自分の未熟さに20年経ってやっと気づく。

 

あの色男のフランス親父も家の親父ももういない。

 

「ろれつが回らなくなっても、朝までずっと飲んでいたい」

 

と皆が言う、

 

このシャンパーニュにブレンドされた色気の秘密はもう聞けない。

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