旨味の多いフグに合わせるのには
やはり懐の深いワインが良いようだ。
今回は熟成30年以上のシャンパーニュ2種(3本分)
それに知名度は低いが飲めば納得の3種を合わせた。
欠員が出たので’66のコトードレヨンはお休み。
初めはシャルドネに押されてすっかり影の薄い
ボルドー辛口。
若い時から酸味が穏やかで飲みやすいが、
30年以上の熟成でさらに後味が長くなり、
料理を邪魔しないマリアージュを楽しめる。
次はAOCの礎を築いたルロワ男爵フォルテイアの白。
お店でこれを寝かせているところがあれば
すぐに常連になった方がいい。
香りに個性があるがそれは癖ではなく、
全てを許してしまう大らかさ。
ボルドーでは出せなかった円やかさは
ふぐの旨味と絶妙の組み合わせ。
次のドイツ、それもラインの70年代は
「真実を知るまた一つの方法」かもしれない。
他の2本にはない優しさあるいは慈しみを感じる。
それはふんわりとした軽いダウンをまとったようで、
同じドイツでもモーゼルのような時折見せる
几帳面な酸味ではない。その理由の一つは
10%くらいと思われる低いアルコール度数。
人気ではフランスやイタリアに負けているが、
これは旨味の多い和食に合う。
そして熱烈なファンがいる ド カステラーヌ80年代。
このころは今より味が濃く、更にマグナムなので
瓶詰ストレスも少なく、美味しい原酒の割合が多い。
ゴクゴク何時までも飲める味わい。
予算に糸目をつけなければ毎日飲みたい一本だ。
最後の泡物もNVだが60年代蔵出しの優れもの。
このレベルの味は別次元で全ての料理そつなくこなす。
つまみは今まで封印していた隠し玉のような
一見ただの焼き魚だが食べると旨味の塊に
皆驚く。
それはあまり美味いと言ってもらえない「カマス」
を焼いただけなのだが、その味付がミソ(味噌ではなく)で
カツオの塩辛の‛酒盗’に一晩酒と一緒に漬け込み、
焼いたもの。これだけ見ると頼りないが、
味は(大袈裟に言えば)旨味が爆発するほどで、
「かますってこんなに美味しい魚だったのですか?」
と聞かれ女将共々にっこり。
次の鶏は見た目はただの照り焼、
でもジャカール処理して秘伝のタレに一晩漬けているので、
中まで味が染みている。
ドイツワイン(ルーランダーとヴァイスブルグンダー)
に合わせたのが最高とお褒めを頂いたので
この後のチーズケーキまで飲むことになった。