2018年12月3日(月)

「ワインは酸化すると美味くなる」ということは誰でも知っているが、

 

 

どうすればいいか教えてくれる人がいない。

 

 

教科書にはパニエに寝かせ、デカンタージュすれば

 

 

酸化が促進されヴィンテージワインも美味しくなる、と。

 

 

でも30年以上寝ていたものは、すぐには開かず、

 

 

この通りデカンタージュしても、味が荒れてしまう。

 

 

ワインも寝起きが悪いわけだ。

 

 

それで長年考えていた答えの一つがワインシャワーだった。

 

でも天国へもう少しというところだというのは分かるが、

 

 

それ以上は登れなかった。

 

 

しかしこれに出会い、

 

 

天国への扉が昨晩開いた。

なんのことはない酸素缶だ。

 

 

ワインを保存するのに窒素ガス缶を使うのに、

 

 

その逆をすることに長年頭が回らなかったわけだ。

 

 

このことを実証する場、それが昨夜のワイン会だった。

 

 

一同「そんなことあるの?」と信じなかったが、

 

 

論より証拠で、試したところ何れも素晴らしく開花し、

 

 

天国の扉が開いたと思う。

人数が減ったのでマグナムはやめて、’85リオナから始める。

 

 

ラベルを見ると一瞬ラフィットの造るラカルドンヌを思わせる。

 

 

しかし味わいはもっと上で、そこは一面赤い花畑の中にいる香り、

 

 

そして何処までも甘い味わいが続く。「信じられない」と

 

 

皆思ったに違いない。聞いたこともないそれも外側の

 

 

ACサンテミリオン。とてもしなやかでオードブルに

 

 

よく合う。次もラベルが信じられない’75ドプレサック。

 

 

これと’59ドプレサックは蔵出しで真っ新だ。

 

 

’47カイウと一緒に仕入れたので同じコンディションと思ったが

 

 

コルクを抜いて驚いた。なんとりコルクボトルなのだ。

 

 

コルクの上に’96と’97リコルクした、との印字が。

 

 

ということは、味に特徴が出る。熟成し直して22,3年。

 

 

リコルク時に足した目減り分の新しいワインが

 

 

そろそろ大人になりだして自己主張を始め、

 

 

60年前のワインと瓶の中で馴染まず、

 

 

不協和音を出し始めていたが、

 

 

それが不思議と心地よいのだ。

 

 

ストラビンスキーの春の祭典ではないのだが

 

 

あれほどスリリングではないにしても

 

 

とても不思議な世界が広がる。

 

 

そして’67ヴューシャトーセルタン。

 

 

ここから景色ががらっと変わり、赤い花でも

 

 

ブーゲンビリアからバラとイチゴのシロップになる。

 

 

息もつかせぬ勢いで’64ヴィルモリーヌの甘い温風が

 

 

流れてくる。実はこれが2番目のお気に入り。

 

 

以前飲んだ時も甘く優しく包まれ、

 

 

忘れられない味わいだったのだが今回も

 

 

裏切られない素晴らしさ。でもこれは’70までで、

 

 

オーナーが変わってからは評判を聞かない。

 

 

 

’59はもう還暦なのに年相応にふるまうのを

 

 

ブレンドされた新しいワインが引き留める。

 

 

まだいける、まだいけると。

 

 

そして’53、これが飲みたくて企画したようなもの。

 

 

とにかく素晴らしいの一言。メルローが熟成すると

 

 

ピノノワールに似てくると、言われている通りになっている。

 

 

そろそろとりの’47を開けなくては。

 

 

これに合わせるのはブルーチーズとピーナッツかりんとう。

 

 

ブルーチーズは苦手な人もいるので、十分にバターと

 

 

パナッシェして、スコッチウィスキー入りはちみつをかけた。

オードブルはアワビハム、ツナリエット、タラバガニ、トリュフカマンベール

 

寿司は本マグロヅケ、うに塩辛炙り、〆金華さば炙り

 

カナールロテイ フランボワーズソース、ポテトピュレ

 

左からステイルトン、ゴルゴンゾーラ、ダナブルー、ピーナッツかりんとう

 

 

これらチーズで天国の扉が開いた人もいれば、’64ヴィルモリーヌの

 

 

甘い熱風に煽られて開いた扉の向こうが見えた人もいたはず。

 

 

もちろん私もその一人だったのだが。

 

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