2015年12月26日(土)

「日本からわざわざ来たんだから、蔵を訪問させて?」といったら、

 

「今忙しい」と。

 

それでもと頼み込んで訪問すると、

 

忙しいはずが皆でお茶を飲んでのんびりしている。

 

こんなところがフランスなのかと思いつつ挨拶をすると、

 

「別に日本に売らなくともヨーロッパに顧客が1000軒あるからいい。」

 

と言われ、

 

そんな事言わないでとゴーミヨの記事

 

(’96年間優秀栽培者受賞記事)を見せながら

 

食い下がり、やっと試飲させてもらっているところへ

 

創業者が出現。開口一番

 

「日本人の女性は始めて見た。可愛いからキスさせろ」と。

 

80歳はとうに過ぎて見える親父の言葉に

 

女将も私も一瞬固まってしまった。

 

その隙に女将を抱き寄せ頬にキス。

 

「ふざけるな、日本では絶対にありえないゾ!」

 

という言葉を飲みこんで我慢していると、

 

この色男は家の親父と同い年の73歳だという。

 

こんないい加減で不謹慎、

 

でもこんな洒落たことは家の親父には絶対言えない。

 

ワインの味よりもこの親父の歓迎にすっかり参ってしまった。

 

気合が入り、全てのラインンナップを仕入れた中の、

 

お気に入りはあと2本。

 

この看板ワインの中身が普通のブリュットではなく、

 

プルミエクリュとグランクリュのブレンドだという事、

 

そして自分の未熟さに20年経ってやっと気づく。

 

あの色男のフランス親父も家の親父ももういない。

 

「ろれつが回らなくなっても、朝までずっと飲んでいたい」

 

と皆が言う、

 

このシャンパーニュにブレンドされた色気の秘密はもう聞けない。

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