美味しいワインを探すには、大袈裟に言えばワインの歴史にも注意するといい。
古いものは思い出の味で美味しいと思われているが、それは間違いなく科学的な裏付
けがある。というのは1980年初めころまでは濾過用のフィルターがなく、時間を
かけて静清させ瓶詰めをしていた。小規模のブルゴーニュ等ではまさに手詰めで、
有名なロマネコンティも味の均一化を図るため何樽か混ぜて濾過なく瓶詰していた。
今回開けたワイン達も濾過によって旨味や香りが滓と一緒に取り除かれたものと
そうでないものの違いが若い順から飲み進めて行くと、70年代から急に胸に迫って
くる香り、深い味わいと余韻の長さに、味の景色が変わったと気づかされる。
それは今よりも天候に左右され、「ガチ」で収穫量を落として造っていたのと
大気温が低く夜間と日中の寒暖の差が15度以上あるという理想的な環境だった
現れだからだ。
軽めだがバランスよくできた’88マジシャンベルタン。
トロワグロ等星付きレストランの為に詰められた’85、この鼻を擽る魅力的な香り
は他には見当たらず、シャンベルタンと同格を感じさせる。
’78は正にレーズンフレーバー全開で、70年代最高の当たり年と言っても
過言ではない味の風格を見せた。
’72は外れ年とされていて、
価格も安めで探せばまだ見つかるのでお勧めだ。ただ開くのに時間がかかり、
前日抜栓は必要。
前回のミュジニでも圧倒された名手「クレールダユ」、
そのカズテイエ。プルミエクリュながら堂々たる体格で’85よりも
スケールが大きく、説得力のある味わい。「これだけでもいい」という人続出。
パトリアルシュの最後の末裔の名前(ノエミヴェルノ)をつけた1964年の
シャンベルタンは圧巻で、「膝まづいて脱帽して飲むべし」は
モンラシェだけだけでないことに一同異論はなかったはずだ。
オードブルはあわびスモーク、チューリンガーソーセージ、本マグロハム
寿司はインドマグロづけ、平目昆布〆、こぼれ帆立
メインのカナールロティオフランボワーズ、ポテトピュレ、ごぼうロティ
1958年アルマニャックをたっぷりしみ込ませたデセールはオペラ。