
特別な愛好家達を除けば、最近のフランス人は古いワインより若いワインを
飲む傾向にあります。
更に日本と比べればどうしても「うま味」の捉え方が違い、
以前よりは昆布や鰹節を使う人も増えてきましたが、
生の食材からの出汁を取るのが主流です。
それらを考えると日本人にとっては普通の
写真のような寿司は中身を精査するととんでもないものだ、
ということが分かります。

まず寿司飯を炊く時に昆布を入れて炊き、トッピングのネタに付ける醤油には
既に出汁が入っているという事実は日本では当たり前すぎて
誰も話題にすらしません。
更に出汁の入った卵焼きに乗っているのは「うにの塩辛」です。
酒と塩、それに甘みを隠し味程度に入れたものに、
殺菌洗浄した生うにを入れて1週間漬け込みます。
生うにが「とろっと」甘いだけでつまらないので、
味を付けながら、調味液の中で水分を絞り、
干物(塩辛)にしました。これが赤でも白でも
ヴィンテージワインと良く合うんです。
これは国籍関係なく日本で暮らしていれば普通に体験できる事で、
インバウンドの方達ほど驚きます。
私はこの逆のことを1980年頃のフランス滞在で
経験しました。
それはフランスに来て半年がたった頃、
ふと味噌汁が飲みたくなりました。
それまでは学食の料理まで美味しいと感じていたので、
何も食に関しては不満はなかったはずでした。
ところが持参した`永谷園の味噌汁`を飲んだところ、
今まで感じたことのない衝撃を感じました。
それこそ五臓六腑に染みわたり、それまで完璧に忘れていた
うま味と優しさが胃袋から全身に広がりました。
これを読んでいる人は「何を大げさな!」と思うでしょうが、
出汁のない世界で半年以上暮らしてみると、
同じ感動を味わえると思います。
つまり日本でマリアージュについていえば、
チーズやトマト、肉類の旨味はヨーロッパでは感じられますが、
圧倒的に旨味を持つ乾物の出汁と醤油、味噌等発酵調味料が
ヴィンテージワインと最高の相性を感じることが出来るのです。
でもこれらの事は秘密ではないにも関わらず、
星付きのお店で乾物の出汁を使ったり、
寿司屋でヴィンテージワインをなぜか出しません。
40年以上前のヴィンテージワインと寿司の相性は最高で、
日本酒以上のマリアージュを体験できると言っても、
信じない、または試そうとしない人であふれています。
不思議な国、ニッポンです。
甘酸っぱいワインに甘酸っぱい酢飯。
対比効果で日本酒以上互いの良さを感じることが出来て、
ワイン単独で飲んだ時より、
寿司を頬張りまだ飲み込まないうちにワインを流し込むと、
これぞ「マリアージュ」の典型を体験できます。
これを読んで興味を持たれた方はぜひ仙台にお越しください。
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