甘みは旨みとよく言われますが、
1970年代くらいまではこれらのワインは
とても人気がありました。社会が豊かになると、
食事の傾向が変わり、酒類は
辛口になると言われています。が、
これらのワインをただで飲んでもらっても
「不味い!」という人はいません。
ただ何となく、赤ワインのフルボディに手が伸びる
だけなのでしょう。
写真左端から、1939年シャトークテ、
1955年シャトーディケム
1961年シャトートリュエ、
1967年クロ シャポンセギュール、
1988年Rドリューセック、
1994年シャトーラボリ。
貴腐ワインの原料のぶどうは、
樹になっている時から貴腐菌の作用でぶどうの中で化学変化
が起きて、普通のぶどうとは違った育ち方をするため、
美味しさのピークが来るのが遅いだけでなく
増加したミネラル分の作用で酸化、
劣化ともに遅くなるようで、
普通のワインと比べると日持ちするワインです。
お勧め料理は和食で、料理に砂糖、
みりんを使うため、他国の料理と比べると、
デザートと料理の区別が曖昧で、
食中酒として合わせても違和感がでません。
きっと料理とワインの両方の良さを感じる程よい
距離感がでるからだと思います。
右端のシャトーラボリはこの中ではまだ若者で、
甘みが前面に出て、
ぶどう由来の香りに支配されている味わい、
でもこのクラスではこなれた熟成感で楽しませてくれます。
おうちで食べるカレーライス、
肉じゃが、甘い卵焼きにとても良く合います。
次のRドリューセックは甘い香りで辛口ワイン。
飲み始め、口に入れた時は甘口で、
飲みこむ頃は辛口の不思議な味の個性です。
これは貴腐菌が上手く着かなかったぶどうで
造られた辛口ワインなんです。
だから途中まで甘く、後で辛くなるんです。
先月から続く猛暑の時にスッキリ暑気払いするのに
最高のワインです。
1967年のこのワインから味わいが別世界になります。
この頃から本領発揮で、
「ヴァンモワルー(デザートワイン)とはこうゆうものですよ」
と言える代表的な味です。
とにかく出しゃばる味がなく、甘すぎず、渋みもなく、
ただ穏やかに心地よい世界へ
誘ってくれます。
これと対照的なのが1961のワインで、
シェリーのフィノのようにすっきりと辛口で、
甘みを全部使い切って発酵させた貴腐ワインという味です。
ブラインドで飲んだらヴィンテージシェリーと間違うでしょう。
そんな中で魂をつかんで離さないのは、
とても素晴らしい仕上がりの左端のシャトークテ。
このようなワインを飲んだことのない
このワインと同じ年代のうちのフェローがとても感動し、
ビニール袋に入れてもって帰りたい
(女房に一口飲ませたい)と言い出したほどの旨さ。
とにかく円やかで、甘すぎず、穏やかで、
あらゆる料理と寄り添い幸せになれる仕上がり。
これに比べれば、シャトーディケムはまだまだ若く感じますが、
当たり年でぶどうの選別も
抜群なのは、一口飲んだだけで分かるほどの格の違いを感じさせます。
甘みも酸味も前に出てきませんが、
きっと陰に潜んでいるのだろうと、飛びっきり酸っぱくて
こってり甘いレモンのタルトをオーダーし、
合わせてみると驚くほどの酸味を感じ、更に
タルトよりも甘い味わいに支配されました。参りました。
今の時期なら、このようなパッションフルーツのタルトがもっとお勧め。
美味しく飲むポイントは、
1)できれば1970年代以前の物を探す。
2)前の日にコルクを抜いて、すぐにリコルク。
3)甘み、酸味のある料理と合わせる。
4)鉄板は、シュークリーム。